
ハンドメイドで子ども服を作る方から、こんな声をよく耳にします。
「シーチングで作ったワンピース、洗濯したらシッワシワになって、毎回アイロンが必須です」
「綿100%のオックスやブロードもダメ。ワッシャー加工以外で、シワに強い生地ってないんでしょうか」
「ド派手な柄ものが好きなんですが、そういう生地ってだいたいシーチングなんですよね」
ハンドメイドあるあるの上位に必ず入る悩みでして、私たちのような生地屋に届くお問い合わせの中でも、もっとも多いテーマのひとつです。

そして結論から申し上げてしまうと——これはほぼ全面的に、素材選びの段階で勝負がついている問題なのです。腕の良し悪しではなく、生地の組成と織り方の問題。今日はこの話を、生地屋の人間としてちょっと真面目に解説してみたいと思います。
まず、なぜ綿100%はシワになるのか
そもそも綿という繊維は、非常にシワになりやすい繊維です。これは綿の宿命のようなもので、繊維1本1本の内部構造を顕微鏡レベルで覗いてみると、その理由がよく分かります。
綿は、植物の種子から採れる天然繊維。乾燥した状態だとリボンのようにねじれた、扁平な形をしています。このねじれた構造のおかげで、空気を含んで暖かく、肌触りもよく、しかも吸水性が高い——という素晴らしい特性を発揮するわけですが、同時にこのねじれた構造が、水を吸ったときに変形しやすく、その変形がそのまま固定されてしまうという性質も持っているのです。
要するに、洗濯機で揉まれて、水に濡れた状態で繊維がぐにゃっと曲がる。そのまま乾く。すると曲がった形が記憶される。これがシワの正体です。
ですから、綿100%である限り、シワをゼロにすることはほぼ不可能。問題はその綿を、どう織るか、何と混ぜるか、なのです。
生地別、シワ耐性ランキング
ハンドメイドでよく使われる生地を、シワ耐性の順に並べてみましょう。手元で何度も洗濯と乾燥を繰り返した、実感ベースのランキングです。
5位:シーチング
プリントで多用される、薄手の平織り生地です。糸が細く、密度も低めで、ふんわり軽い質感が特徴。可愛い柄の宝庫ではあるのですが、ことシワ耐性に関しては最弱クラス。洗濯後、ノーアイロンで着るのは現実的にかなり厳しいです。
ただし、これは「一般的なシーチング」の話。同じ「シーチング」という呼び名でも、糸の太さと密度しだいで生地の性格はがらりと変わります。当店の品番3000「国産コットンシーチング」は、後述する綿ポリダンガリー(品番4500)とまったく同じ20番手の糸を使い、密度もしっかり詰めて織っています。糸が細すぎず、生地としての骨格があるため、一般的なシーチングよりも明らかにシワに強く、洋服用途にも十分耐えるレベルに仕上げています。「シーチング=必ず弱い」と一括りにしてしまうと拾えない例外もある、ということは生地屋として一応お伝えしておきたいところです。
[product:3000]
4位:ブロード
シーチングよりも糸が細く、密度が高い平織り。ワイシャツの定番素材として知られています。シャツ用に作られているので光沢があって品が良いのですが、これも綿100%である以上、シワは避けられません。むしろ平らで光沢がある分、シワが目立ちやすい側面もあります。
3位:オックス
たて糸・よこ糸を2本ずつ引き揃えて織る斜子(ななこ)織り。シーチングやブロードよりも厚みがあり、入園グッズの定番として支持されています。厚みがある分、シワは「折り目」のように残りやすい。
2位:ワッシャー加工生地
そもそもの発想を逆転させた素材です。製造段階で生地に「シワ加工」を施し、最初から細かいシワが入った状態に仕上げてある。だから洗濯してシワになっても、それが「味」として見える。賢い解決策ですが、テクスチャが独特なので、無地や落ち着いた柄でないと選びにくいというのが正直なところ。
1位:綿ポリ(綿ポリエステル交織・混紡)
そして堂々の1位が、綿とポリエステルの混紡生地です。
——と書きたいところなのですが、ここは正直にお話しします。純粋に「シワ耐性」だけで順位をつけるなら、本当の1位はポリエステル100%、もしくはナイロン100%です。これらの合成繊維100%生地は、洗ってそのまま干せばほぼノーアイロンで着られる、文字どおりの最強素材。
ただ、合成繊維100%には現実的な問題がいくつかあります。家庭用ミシンでは滑って縫いにくかったり、アイロンが効かず折り目をつけられなかったりする。なにより、綿のあの吸水性とナチュラルな肌触り——汗を吸ってくれて、ベタつかず、肌当たりがやさしい——あの感触は、合成繊維100%では絶対に出せません。
だからハンドメイドで「縫いやすく」「気持ちよく着られて」「それでいてシワに強い」を全部取りたいと考えたときに、現実的に行き着くのが綿ポリ生地なのです。当店で30年以上作り続けている綿ポリダンガリー(綿55%/ポリエステル45%)は、まさにこの「いいとこ取り」を狙って改良を重ねてきた素材。家庭用ミシンでもストレスなく縫えて、肌触りはちゃんと綿、それでいてシワは合成繊維側がしっかり抑えてくれる。実用面でのバランスでは、他の追随を許さない素材だと自負しています。
[product:4500][product:4510][product:4520]
なぜ綿ポリはシワに強いのか
理屈はシンプルです。
ポリエステルという繊維は、合成繊維の中でも特に形状記憶性が高い素材です。まっすぐカチッと固定されているから水に濡れて多少変形しても、乾くとほぼ元の形に戻ろうとする性質を持っているのです。
この性質を、シワになりやすい綿と組み合わせる。綿が曲がっても、隣で組まれているポリエステルが「いやいや、まっすぐに戻りなさい」と引っ張ってくれる。結果として、生地全体としてはシワになりにくい仕上がりになるわけです。
当店の場合、長年の試行錯誤の末、綿55%/ポリエステル45%という比率に落ち着きました。これより綿が多いとシワ耐性が落ち、これよりポリエステルが多いとコットンらしい風合いが失われる。微妙なバランスの結果なのです。
派手な柄を活かす「無地」という選択
ところで、最初に紹介したお悩みの方は、こうもおっしゃっていました。
ド派手で個性的な柄が好きで、シーチングやブロードを選んでしまう
これは実はとても大事な視点だと思っていて——派手な柄を本当に活かしたいなら、それと組み合わせる「無地」こそ、シワに強い素材を選ぶべきなのです。
ストロベリーシーフのような華やかなプリントを上半身に使い、下半身に落ち着いた無地を持ってくる。これはハンドメイドの王道のコンビ。ところがその「無地パート」を綿100%のシーチングで作ってしまうと、洗濯のたびにシワが目立ち、せっかくの派手柄まで野暮ったく見えてしまう。
無地は「脇役」ではあるのですが、シワ耐性という意味では、むしろ無地の方こそ気を遣うべき。派手柄パートは多少シワが入っても柄に隠れて目立ちませんが、無地は隠す相手がいませんから、シワがダイレクトに見えてしまうのです。
「良心的なネット生地屋」の話
最後に、これも先ほどのお悩みの方が書かれていたことなのですが——
ついでに良心的なネット生地屋さんがあれば教えてください
自分のお店を勧めるのは少し気が引けるのですが、もしまだ綿ポリを試されたことがない方には、一度サンプルだけでも触ってみていただきたいというのが本音です。
当店では、こだわりの国産生地を50cm単位から販売しています。一番人気の綿ポリダンガリーシリーズは全部で56色。シーチングでよく使われるくすみカラーから、ベーシックな白・グレー・ブラウン、ちょっと攻めた濃色まで一通り揃っています。
ネットの写真だけでは色味も厚みも手触りも、なかなか伝わりにくいものです。そういう方のために、当店では実物サンプル付きの綿ポリ総合カタログ(¥1,000)をご用意しています。綿ポリダンガリーを含む、当店の綿ポリ生地一式の実物が手元で見比べられ、解説冊子付きでお届けします。「綿ポリ選びで迷ったら、まずこの1冊」と思って作りました。
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これとは別に、ダンガリー単体のサンプル帳もあります。
[product:4500-sample-book]
[product:ring-sample-4500]
この際、全部の綿ポリダンガリーのサンプルを!という方には全部入りもあります
[product:4500-4510-4520-samplebook-set]
生地のマルイシを運営している(有)丸石織物は兵庫県西脇市という、播州織の産地で織りから染め、加工まで完結している、創業71年の生地メーカーです。
「ピンクしか着ない娘でも、手作り服なら喜んで着てくれた」
「アイロン要らずは本当に助かります」
「面倒くさがりの私にはぴったりでした」
綿ポリダンガリーにはこうしたレビューを3,100件ほど、いただいています。平均評価は★4.7。私たちが30年改良を重ねてきた素材を、最終的に評価してくださるのはお客様ですから、この数字には正直なところ、すこし救われる思いがしています。
まとめ
長くなりましたので、最後に要点だけ整理しておきます。
- 綿100%の生地は、繊維の構造上、どうしてもシワになる
- シーチング・ブロード・オックスはいずれも綿100%なので、基本的にシワ耐性は限定的(ただし糸番手と密度しだいで例外もある)
- 純粋なシワ耐性ならポリエステル100%・ナイロン100%が最強。ただし家庭用ミシンで縫いにくく、綿の肌触り・吸水性は得られない
- ハンドメイドで「縫いやすさ・着心地・シワ耐性」を全部取りたいなら、綿ポリ生地が現実解
- 派手柄と組み合わせる「無地パート」こそ、シワ耐性の高い素材を選ぶべき
- 試してみたい方は、サンプル帳から
ハンドメイドの楽しさを、洗濯後のアイロン作業に奪われないために。素材選びでこんなに変わるんだということが、少しでもお伝えできていたらうれしいです。