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Vol.06 作る前の迷い 2026年7月 水通しと、生地の裏表の話 水通しは必要か、裏表を間違えたらどうなるか。検索すると強めの答えが出やすいテーマを、生地屋の目線で整理した回です。 全文を読む 閉じる
こんにちは。生地のマルイシ 店長です。水通し不要の生地を見る
今日は、7月3日の朝ラジオで話した
「水通し」と「生地の裏表」の話を、メールで読める形にまとめました。
このあたりは、洋裁を始めたばかりの方ほど迷いやすいところだと思います。
水通しは必ずした方がいいのか。
生地の裏表を間違えたら、作品としてだめなのか。
型紙の地の目は、どこまで厳密に見ればいいのか。
検索すると強めの答えも出てきますし、教える人によって言い方も違います。
生地屋としての感覚で言うと、これは全部、答えが一つに決まりにくい話です。
やった方が安心な場面もあります。
でも、そこまで怖がらなくていい場面もあります。
まず、水通しの話からします。
水通しの目的は、多くの場合、仕立てたあとに生地が大きく縮むのを避けることです。
海外でいう prewash は、完成後に洗うのと近い条件で、先に一度洗っておくという考え方に近いと思います。
一方で、日本で言われる水通しには、和裁の湯のしや、昔からの洋裁の下準備の感覚も少し混ざっています。
そのせいか、言葉だけが先に広がって、
「とにかく全部やらないと危ない」
という印象になっているところもあります。
もちろん、水通し自体が悪いわけではありません。
洗ってから作る方が気持ちよければ、やっていいです。
肌に直接触れるもの、子どもが使うもの、初めて買うお店の生地、古い生地や保管状態が分からない生地なら、一度洗って様子を見たくなるのは自然です。
ただ、どの生地にも同じ強さで必要かというと、そこは分けて考えた方がいいと思っています。
生地のマルイシで定番として扱っている生地は、生産背景や縮みの出方を見ながら販売しています。
綿ポリ系のように、届いたらすぐ裁断しやすいことを大事にしているシリーズもあります。
お客様にとって、水通しはけっこう大きな手間です。
水に浸して、干して、地直しして、それから裁断する。
まとまった長さを買った時ほど、場所も時間も必要になります。
だから、こちらで根拠を持って
「水通ししなくても大丈夫」
と言えるものは、そう伝えたいんです。
準備に時間を取られすぎず、届いた勢いで裁断に進めることも、生地選びの安心につながると思っています。
反対に、やっておいた方が安心な場面もあります。
寸法がきっちり出てほしいシャツ。
洗濯後の縮みが目立ちやすい服。
販売用の作品。
初めて扱う素材。
こういう時は、手元で一度洗って変化を見ておく方が判断しやすいです。
生地の出どころが分からない場合も同じです。
海外で買った生地、古いストック、保管状態が読めないものは、こちらが普段見ている定番生地とは前提が違います。
少し手間でも、先に洗う方が気持ちよく作れることがあります。
結局のところ、水通しは
「正解を守る作業」
というより、自分が後で困らないための確認です。
気になるならやる。
気にならない用途なら、そのまま進める。
そこにもう少し幅があっていいと思います。
次に、生地の裏表の話です。
生地には、企画する側が
「こちらを表にしよう」
と決めている面があります。
糸の撚り、織り組織、光の反射、検反のしやすさなど、理由はいろいろあります。
綾織なら、斜めの線の見え方や光沢で表情が変わることもあります。
でも、使う人が反対側の表情を好きなら、そちらを表にしてもかまいません。
実際に、あえて裏面を使うデザインもあります。
普通の服や小物として使う範囲なら、
「裏を使ったから急に弱くなる」
というものではありません。
大事なのは、作品の中で面をそろえることです。
身頃の右と左で違う面を使ってしまうと、さすがに違和感が出ることがあります。
でも、最初に
「こちらを表にする」
と決めて統一すれば、それはその作品の表になります。
生地の耳に、小さな穴が並んでいることがあります。
テンターという機械で幅を整えたり、仕上げたりする時につく針やピンの跡です。
この穴の向きで表裏を見分ける、という話を聞いたことがある方もいると思います。
たしかに、ヒントになることはあります。
ただし、絶対ではありません。
加工の工程で生地をどちら向きに入れるかによって、穴の見え方は変わります。
耳の穴だけで決めきるより、光沢、柄の見え方、織りの表情、手ざわりを合わせて見る方が自然です。
朝ラジオでは、地の目や生地の縦横についても少し話しました。
型紙に地の目線が書いてある時は、基本的にはそれに合わせるのが安心です。
大きな服、ワンピース、エプロン、長く着たいもの、販売するものは、型紙通りに取る方が形が安定しやすいです。
一方で、小物や、短い期間だけ着る子ども服、どうしても柄の向きを優先したいものなら、横地で取っても実用上あまり困らないことがあります。
ここも、生地と作品によって許容できる範囲が違います。
少しでも失敗したくない時は、型紙通りに。
この柄の向きで作りたい、小さなものだから大丈夫そう、と思える時は、自分の目的を優先する。
水通しも、生地の裏表も、地の目も、知識として知っておくと役に立ちます。
でも、知れば知るほど作れなくなるのは、ちょっともったいないです。
やった方が安心なら、やる。
そのまま進めても大丈夫そうなら、進める。
裏面の方が好きなら、そちらを表にする。
生地屋としては、必要な根拠はできるだけ伝えたいと思っています。
その上で、作る人が最後に気持ちよく決められるのが一番です。
今日はそんな話でした。
生地のマルイシ
店長 -
Vol.05 生地選び 2026年6月 ストライプ生地、幅でかなり変わります 1.5mm、3mm、5mm、12mm。線の幅が変わると、服や小物になった時の印象も変わります。写真で比べながら選べるようにした回です。 全文を読む 閉じる
こんにちは、生地のマルイシです。ストライプの読みものを見る
今回は「ストライプ生地は、幅でかなり変わります」という読みもののご案内です。
無地より少し表情が出て、チェックよりもすっきり。ストライプは夏ものにも使いやすい柄です。
ただ、選ぶ時に迷いやすいのが線の幅です。1.5mm、3mm、5mm、12mmで、服や小物になった時の見え方がけっこう違います。
1.5mmは控えめで上品。3mmは細めだけど柄として伝わる。5mmは使いやすい定番。12mmは柄を主役にしたい時に向いています。
今回の記事では、幅ごとの作品例を増やして見比べられるようにしました。綿ポリダンガリーストライプを中心に、ハーフダンガリー、ピンストライプ、ヒッコリー、5731のデニムストライプも載せています。
生地だけ先に見たい方は、4510 綿ポリダンガリーストライプ、6610 ハーフダンガリーストライプ、5311 ヒッコリー、5731 デニムストライプもあわせてご覧ください。
生地のマルイシ -
Vol.04 店の考え 2026年7月 訳あり生地を売る理由と、値付けの話 加工汚れや織りキズのある生地を、どう扱うか。安く売るだけの話にせず、産地の中で商売を続けるうえでの考えも書いています。 全文を読む 閉じる
訳あり生地を売る理由と、値付けの話訳あり生地を見る
音声で聞きたい方はこちらからどうぞ。
7月14日の朝ラジオでは、訳あり生地のことと、値付けのことを話しました。
生地屋さんの中には、訳あり品をほとんど出さないお店もあります。ブランドの見え方を大事にするなら、それもよく分かります。きれいな商品だけを並べる、という考え方もひとつの方針です。
一方で、生地のマルイシでは訳あり生地も販売しています。むしろ、比較的多く販売しているお店だと思います。
それは織物を作って、産地の中で商売を続けていくうえで、その方が全体として健全だと考えているからです。
⚪︎織物には、どうしても訳ありが出ます
マルイシで扱っている生地の多くは、綿や綿ポリなどの織物です。織物は規格化された商品ではありますが、完全にブレのない工業製品とは少し違います。
天然繊維が入っていると、原料そのものに小さな差があります。織っている途中で綿ぼこりが入ることもありますし、わずかな織りキズが出ることもあります。
その中で、1反の中に何点までならA反、一定以上あればC反、という基準で分けていきます。もちろん全部がA反で上がってくるのが一番です。でも現実には、訳あり部分がゼロになることはありません。
⚪︎機屋さんに全部背負わせない
訳あり部分が出た時に、その負担を誰が持つのか。
会社によっては、織ってくれる機屋さんに補償してもらうこともあると思います。明らかな大きい不良や、全体に問題がある場合は別です。ただ、1反の中に少し訳あり部分が出た、というようなケースでは、マルイシは基本的に機屋さんへ請求しないようにしています。
理由はシンプルで、仕事をしてくれている人が安心して織れる環境を残したいからです。
こちらが強い立場で「これはそちらの責任です」と言い続ければ、相手は苦しくなります。苦しい状態が続くと、いい仕事をしようという気持ちも続きません。何より、次も一緒に仕事をしたいと思えなくなってしまう。
だから、訳あり分はこちらで引き取り、通常品より買いやすい価格で販売します。そうすると、お客様は少し安く生地を試せます。機屋さんも必要以上に責められない。マルイシとしても、まったくの損で終わらせずに済みます。
もちろん、訳あり生地が出ること自体はうれしいことではありません。それでも、誰か一人に全部を背負わせるよりは、この形の方が長く続けやすいと考えています。
訳あり生地は、状態や在庫がその時々で変わります。気になる方は、こちらからご覧ください。
訳あり生地の商品ページを見る
⚪︎三方よしで考える
こういう判断の土台にあるのが、近江商人の「三方よし」です。
売り手によし。買い手によし。世間によし。
売り手である私たちが、ちゃんと商売として続けられること。買ってくださるお客様が、買ってよかったと思えること。そして、周りから見ても後ろめたい商売ではないこと。
この3つがそろって、ようやく会社は長く続けられるのだと思います。
ただ、実際にこの3つを満たそうとすると、だいたい楽ではありません。お客様には喜んでもらいたい。機屋さんや仕入れ先さんにも無理を押しつけたくない。自分たちも倒れてはいけない。
でも、迷った時にはここに戻ります。この判断で、どこかに無理が寄りすぎていないか。誰かを泣かせる形になっていないか。完璧にはできなくても、できるだけその方向へ寄せていきたいと思っています。
⚪︎値付けは、続けるための判断です
訳あり生地の話は、そのまま値付けの話につながります。
訳あり生地をいくらで売るのか。定番生地をいくらで売るのか。原価が上がった時に、値上げするのか、それとも我慢するのか。
経営をしていて、値付けは本当に難しい仕事だと感じます。生地を作ること自体は、工程を組めば進められます。原価も積み上げれば見えてきます。でも、その商品にどんな値段をつけて、お客様にどう届けるのか。そこには、そのお店の考え方が出ます。
昔のマルイシは、今よりかなり安く売っていた時期がありました。たくさんのお客様に知ってもらいたい気持ちもありましたし、とにかく買いやすくしたかった。でも、そのやり方は続きませんでした。気持ちの面でも、商売としても、無理が出ます。
⚪︎安いだけでは、店は続かない
激安のお店は、お客様にとってはうれしい存在です。安く買える瞬間は、もちろんありがたい。
けれど、その価格でお店が続けられないなら、いつか閉店してしまいます。気に入っていたお店がなくなると、お客様も困ります。次に同じものを買いたくても、もう買えません。
好きなラーメン屋さんには、ずっと続いてほしいと思います。自分が年を取っても行きたいし、家族とも行きたい。そう思うお店には、ちゃんとお金を使います。原材料が上がっているなら、無理をして閉めてしまうくらいなら、値上げして続けてほしい。
今いるお客様に、来年も、10年後も、できれば30年後も同じように生地を届けたい。実際に、マルイシには30年以上同じ生地を注文してくださっているお客様もいます。その方が同じ生地を買い続けられるのは、こちらが続いているからです。
国産で、ごく普通に使える定番生地を作り続けることは、以前より難しくなっています。特殊で少量のものは国内に残りやすい一方で、スタンダードな生地ほど海外へ移っていきました。だからこそ、今ある作れる環境を簡単には手放したくありません。
⚪︎値上げは怖い。でも、必要な時がある
値上げをすると、お客様が離れるかもしれません。実際、毎回不安になります。これで大丈夫なのか、やっていいのか、と考えます。
それでも、仕入れ先さんや機屋さんから「原価が上がったので価格を上げたい」と言われた時に、こちらがまったく値上げできない状態だと受け止められません。結果として、下の工程に苦しさを押し返すことになります。
それは三方よしではありません。
値上げをすれば、離れるお客様もいるかもしれない。そうなったら、新しいお客様に知ってもらう努力が必要です。広告を学ぶことも、発信を続けることも、そのための仕事です。楽ではありませんが、続けるためには必要な仕事だと思っています。
マルイシが激安のお店になることは、たぶんこれからもありません。安い方がうれしい、という気持ちはよく分かります。それでも、できるだけ長く続けるための値段をつけることの方が、お客様に対して誠実な場面もあると考えています。
⚪︎訳あり生地を売ることも、値付けも、同じ話です
訳あり生地を売る理由と、値付けの考え方は、別々の話のようでつながっています。
機屋さんに無理を押しつけないこと。お客様に少しでも買いやすい選択肢を用意すること。マルイシ自身も続けられる形にすること。
どれか一つだけを見れば、もっと簡単な判断もあります。でも、長く続けようと思うと、全体で考える必要があります。
訳あり生地は、完璧な反物ではありません。キズや汚れの場所を避けて使う必要がありますし、用途によって向き不向きもあります。それでも、状態を確認しながら上手に使っていただければ、いつもの生地を少し手に取りやすく試せる入口にもなります。
生地を選ぶ時に、こういう背景も少しだけ思い出してもらえたらうれしいです。
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Vol.03 道具の話 2026年7月 高いはさみって、やっぱり違うんですか? 播州刃物の握り鋏について、切れ味、研ぎ直し、道具としての楽しさを店長目線でまとめた回です。 全文を読む 閉じる
こんにちは。生地のマルイシ、店長の石井です。握り鋏の読みものを見る
今日は、播州刃物の握り鋏についてです。
ブログにも載せる予定ですが、今回はメルマガでも全文そのままお送りします。少し長めですが、道具選びが好きな方にはたぶん読んでもらえる話です。
播州刃物の握り鋏は、何がいいのか。切れ味と、道具としての楽しさの話
はさみって、100円ショップのものから、数千円、数万円するものまで本当にいろいろあります。そこで気になるのはやっぱり、「高いはさみは、そんなに切れるのか」というところだと思います。
正直に言うと、糸をちょんと切るだけなら、価格の差を毎回はっきり感じるとは限りません。今使っている糸切りばさみに満足しているなら、それで困らない場面も多いです。
ただ、布を切る、細かい作業を長く続ける、研ぎながら使う。そこまで含めると、いいはさみの見え方は少し変わってきます。
播州刃物は、兵庫県小野市の刃物です
播州刃物は、兵庫県小野市の刃物づくりから生まれたブランドです。
小野市は、昔から家庭用刃物の産地として知られてきた町です。なかでも握り鋏は、縫製工場や繊維関係の仕事が多かった時代には、今よりずっと出番の多い道具でした。
新しく工場に人が入れば、まず道具として握り鋏を渡す。そんな時代があったわけです。
でも、日本国内の縫製や繊維の仕事が少なくなるにつれて、握り鋏を日常的に使う人も減っていきました。使う人が減ると、作る数も減ります。作る数が減ると、職人さんも、材料を作る会社も、続けるのが難しくなっていく。
播州刃物の握り鋏は、そういう背景の中で残っている道具でもあります。
「利器材」と「総火造り」
握り鋏には、作り方にも違いがあります。
一般的な量産に近い作り方では、利器材と呼ばれる材料を使います。鉄と鋼をあらかじめ合わせた材料を使い、型で抜いて、研磨して、形にしていく。工業的な作り方ではありますが、刃物としてきちんと使えるように作られています。
一方で、総火造りと呼ばれる作り方もあります。これは、職人さんが火を入れながら、鉄に鋼を付けて形を作っていく方法です。日本刀の作り方に近い、と言うと少しイメージしやすいかもしれません。
総火造りの握り鋏は、数をたくさん作れるものではありません。見た目も、工業製品のように完全に均一ではなく、少しゆらぎがあります。そこを「味」と感じられるかどうかで、向き不向きが分かれる商品だと思います。
切れ味だけを数字で比べると、価格が倍なら切れ味も倍、という話ではありません。ここから先は、道具としての楽しさもかなり入ってきます。
いい道具を使っている、という気持ち
洋裁や手芸の道具には、実用性だけで語りきれないところがあります。
よく切れること。手に持ったときの重み。刃を閉じたときの感触。小さなハンマー跡や、手仕事の気配。「この道具を使っている」という気持ち。
そういうものが、作業の時間を少し楽しくしてくれることがあります。
僕自身も、釣り道具やカメラのレンズで同じようなことを感じます。必要最低限の機能だけで言えば、もっと安いものでもできる。でも、自分が気に入った道具を使うと、作業に入る気分が変わる。
握り鋏も、その近いところにある道具だと思っています。
糸を切るだけなら、差は小さいかもしれません
では、播州刃物の握り鋏は誰に向いているのか。
糸を切るだけなら、今のはさみで満足している方は急いで買い替えなくてもいいと思います。小さくて手元に置きやすい、ミシンまわりに置いてすぐ取れる、という使いやすさはありますが、切れ味の差を強く感じるかは使い方次第です。
差が出やすいのは、布を切る場面です。
たとえば、つまみ細工のように小さな布を切る作業。長刃の握り鋏で、細かく布を切っていくような使い方。こういうときは、はさみの切れ味や刃の持ちが作業感に出やすいです。
ちゃんと鋼が入っているはさみは、切れ味が落ちてきても研ぎ直しができます。買って終わりではなく、手入れしながら長く使う道具です。
古いはさみも、研げばまた使えることがあります
お母さまやご家族が使っていた裁ちばさみ、握り鋏が家にある方もいると思います。
切れなくなったから捨てる、の前に、一度研ぎに出してみるのもいいです。状態にもよりますが、古いはさみでも、きちんとしたものならまた使えるようになることがあります。
ただ、はさみの研ぎは包丁とは少し違います。包丁を研げる人でも、はさみを自分で研ぐと逆に切れなくなることがあります。大切なはさみなら、はさみの研ぎに慣れているところへ出すのが無難です。
播州刃物の産地である小野の組合でも、研ぎ直しサービスがあります。長く使いたい方は、そういう選択肢も知っておくと安心です。
買う前に知っておいてほしいこと
播州刃物の握り鋏は、ピカピカで、完全に均一で、いかにも規格化された商品とは少し違います。
もちろん、道具としてよくできています。よく切れるし、長く使える。でも、手仕事のゆらぎがあります。そこを含めて好きになれる人には、とてもいい道具です。
「とにかく安く、すぐ買い替えられるものがいい」という方には、別の選択肢のほうが合うかもしれません。
「長く使える道具をひとつ持ちたい」「作業机に置いて、少し気分が上がるものがいい」「研ぎながら使う道具に興味がある」
そんな方には、播州刃物の握り鋏は一度見ていただきたい商品です。
道具は、必要だから買うものでもありますが、使うたびにちょっと気分が上がるものでもあります。気になっていた方は、商品ページも見てみてください。
生地のマルイシ
店長 -
Vol.02 お店の裏側 2026年7月 見えないところに、けっこう手間をかけています 在庫を持つこと、商品ページを細かく作ること、梱包や同梱物のこと。買い物画面からは見えにくい店の中側を話した回です。 全文を読む 閉じる
こんにちは。生地のマルイシ 店長です。綿ポリ総合カタログを見る
今日は、先日の朝ラジオで話した
「お客様からは見えにくい、生地のマルイシのこだわり」
という話を、そのままメールで読めるようにまとめてみました。
ブログへのリンクだけだと、開くのが少し面倒な時もあると思うので、今日はこのメールの中で読める形にしています。
お店を運営していると、効率だけで考えれば、やらない方がいいこともあります。
在庫をたくさん持つこと。
商品ページを細かく作ること。
梱包や同梱物に手間をかけること。
どれも、短い目で見ると軽い仕事ではありません。
でも、生地は買って終わりの商品ではありません。
届いたあとに裁断して、縫って、着たり使ったりして、よかったらまた同じものを買いたくなる。
そういう素材だからこそ、見えにくいところの手間が、あとからじわっと効いてくると思っています。
まず、在庫の話です。
生地のマルイシは、定番生地の在庫をかなり持っています。
今の経営の考え方では、在庫はできるだけ少なく、必要な分だけ持つ方が効率的だと言われます。
もちろん、それは分かります。
在庫を持つにはお金も場所も必要ですし、追加で生産をかけるたびに、手元のキャッシュはまた生地に変わっていきます。
それでも、素材屋としては
「買いたい時に、いつもの生地がある」
ことを大事にしたいんです。
たとえば、気に入っているTシャツを毎年買い替えるような感覚です。
欲しい時にいつでも買える。
限定販売に急かされず、必要になった時に戻ってこられる。
その気楽さは、買う側にとってけっこう大きいものです。
生地も同じだと思います。
前に作ったものとお揃いにしたい。
使いやすかったから、今度は同じ生地の違う色で作りたい。
子ども服なら、サイズが変わった時にまた同じシリーズで縫いたい。
そういう買い方ができるように、定番をできるだけ続けていく。
これは見た目には出にくいですが、生地屋としてのサービスのひとつだと思っています。
もうひとつ、大きいのが糸です。
織物は糸から始まります。
どの糸を使うかで、最終的な風合い、表情、丈夫さ、毛玉の出にくさが変わります。
綿ポリダンガリーのような定番生地も、最初から今の形だったわけではありません。
昔の卸の仕事の中で、お客様と一緒に
「この糸はどうだろう」
「この組み合わせはどうだろう」
と試しながら、少しずつ今の仕様に近づいてきました。
綿の糸なら、撚りの具合や糸を作る機械によっても表情が変わります。
ポリエステルの糸も、丈夫さや毛玉の出にくさに関わります。
最近の綿ポリ系のシリーズでは、より毛玉になりにくいポリエステル糸へ入れ替えているものもあります。
お客様からは「糸を変えました」と言われても、すぐには分かりにくいかもしれません。
でも、子どものズボンを作って、サイズアウトまで破れずに使えた。
お下がりでもまだ使えた。
そういう声をいただくと、糸の選び方や生産の積み重ねが、ちゃんと暮らしの中に届いている気がします。
梱包や同梱物にも、理由があります。
生地のマルイシの梱包について、
「きれいに届いた」
「きれいに切ってくれていた」
と言っていただくことがあります。
ここも、効率だけで考えると難しいところです。
もっと短時間で、もっと機械的に、作業を詰めていく方法もあります。
ただ、今は現場のスタッフが、お客様のことを考えながら梱包してくれています。
同梱物にもコストがかかります。
チラシや案内を作るには、紙代も印刷代もかかります。
それでも入れているのは、生地が分かりにくい商品だからです。
食べものなら、りんご、梨、さくらんぼ、と違いが見えやすいものもあります。
でも生地は、慣れていない方から見ると、どれも「生地」に見えやすい。
無地、ギンガムチェック、ストライプ。
写真だけでは、厚みやハリ感、使いやすい用途まではなかなか伝わりません。
だから、買ってくださった方に、次に選ぶ時の基準になるような紙の案内を入れたい。
生地のマルイシで買う時だけでなく、ほかのお店で生地を見る時にも、少しでも判断の軸になればいいなと思っています。
商品ページも、同じ考え方です。
生地のマルイシの商品ページは、少し長いです。
説明が多いと感じる方もいると思います。
上級者の方なら、「早く色を見せてほしい」と思う場面もあるかもしれません。
それでも、今は迷っている方、はじめて買う方、何が分からないのかもまだ分からない方に寄せて作っています。
生地屋として見ると、厚み、ハリ感、透け感、洗濯後の扱いやすさ、向いている作品はそれぞれ違います。
でも、お客様が商品ページを全部読み込んでくれるとは限りません。
だからこそ、写真、言葉、比較、作品例を使って、できるだけ迷いにくくしたい。
「サンプル帳がなくてもイメージ通りだった」と言っていただける時は、そこにかけた手間が少し報われた気持ちになります。
朝ラジオでも話しましたが、生地のマルイシは
「分かる人だけのためのお店」
ではなく、
「分からない人が続けやすいお店」
でありたいと思っています。
洋裁が上手な方、知識が深い方は、自分で調べて、どんどん選べるようになります。
一方で、始めたばかりの方は、何を聞けばいいのかも分からないことがあります。
その人たちが、生地選びでつまずきすぎず、作ることを長く楽しめるようにしたい。
縫いナビも、すぐ売上につながるかというと、効率のいい取り組みではありません。
でも、洋裁っておもしろいな、生地を買って作ってみようかな、と思う人が少しでも増えたらいい。
そこは、これからも大事にしたい入口です。
一方で、最近はスペックだけではない買い方も大事だなと感じています。
厚み、混率、ハリ感、機能性。
そういう情報はもちろん必要です。
とくに生地は、作るものに合うかどうかが大事なので、スペックを無視するわけにはいきません。
でも、
「なんかいいな」
と思って買って、実際に使ってみたら
「やっぱりいいな」
と感じる。
そんな買い物もあります。
生地のマルイシはこれまで、どちらかというと説明や比較に力を入れてきました。
これからは、スペックで納得して選べることに加えて、見た瞬間の気持ちが動くような見せ方も増やしていきたいと思っています。
生地は、作る前にも、作っている途中にも、使い始めてからも、何度も気持ちが動く素材です。
その時間を少しでも楽しくできるように、見えないところも少しずつ整えていきます。
長くなりましたが、今日はそんな話でした。
生地のマルイシ
店長 -
Vol.01 作品例 2026年6月 綿ポリブロードとハーフダンガリーの違い 厚みが近い2つの綿ポリ。スペックだけだと迷いやすいので、服になった時の落ち方や空気感を作品例で見比べました。 全文を読む 閉じる
こんにちは、生地のマルイシです。ブログで違いを見る
今日は、綿ポリブロードと綿ポリハーフダンガリーの違いについてです。
この2つ、厚みはかなり近いです。なのでスペックだけで選ぼうとすると、少しややこしい。
服になった時に違うのは、落ち方と空気です。ブロードはさらっとドライで、シャツらしくすっきり。ハーフダンガリーはやわらかく下へ落ちて、少し湿度のある雰囲気になります。
きちんと見せたいシャツならブロード。ギャザーを入れて、やわらかいワンピースやブラウスにしたい時はハーフダンガリー。だいたいそんな入口で見ると選びやすいと思います。
ブログでは、作品例を見ながら違いを比べられるようにしています。生地だけ先に見たい方は、綿ポリブロードと綿ポリハーフダンガリーの商品ページもご覧ください。
生地のマルイシ
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