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Article: 水通しと生地の裏表、どこまで気にする?

水通しと生地の裏表、どこまで気にする?

水通しは必要か、生地の裏表はどちらを使えばいいか。朝ラジオで話した内容をもとに、生地屋としての根拠と、作る人が最後に判断していいことをまとめました。

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7月3日の朝ラジオでは、水通しと生地の裏表について話しました。

どちらも、洋裁を始めたばかりの方ほど不安になりやすいところです。「水通しは必ずした方がいいのか」「裏表を間違えたら作品としてだめなのか」。調べるほど強い言い方に出会って、かえって迷うこともあります。

生地屋として見ると、答えは一つではありません。やった方が安心な場面もあるし、そこまで怖がらなくていい場面もあります。最後は、作るものと、その人がどこまで気にしたいかで決めていい話だと思っています。

水通しは、「しないと失敗」だけで考えない

水通しの目的は、多くの場合、仕立てたあとに生地が大きく縮むのを避けることです。海外でいう「prewash」は、完成後に洗うのと近い条件で先に一度洗っておく、という考え方に近いと思います。

一方で、日本で言われる「水通し」には、和裁の湯のしや、昔からの洋裁の下準備の感覚も少し混ざっています。言葉だけが先に広がって、「とにかく全部やらないと危ない」という印象になっている面もあります。

もちろん、水通し自体が悪いわけではありません。洗ってから作る方が気持ちよければ、やっていいです。肌に直接触れるもの、子どもが使うもの、初めて買うお店の生地、古い生地や保管状態が分からない生地なら、一度洗って様子を見たくなるのは自然です。

ただ、どの生地にも同じ強さで必要かというと、そこは分けて考えた方がよいです。

生地のマルイシが「水通し不要」と言える理由

生地のマルイシで定番として扱っている生地は、生産背景や縮みの出方を見ながら販売しています。綿ポリ系のように、届いたらすぐ裁断しやすいことを大事にしているシリーズもあります。

お客様にとって、水通しはけっこう大きな手間です。水に浸して、干して、地直しして、それから裁断する。まとまった長さを買った時ほど場所も時間も必要になります。

だから、こちらで根拠を持って「水通ししなくても大丈夫」と言えるものは、そう伝えたいと思っています。準備に時間を取られすぎず、届いた勢いで裁断に進めることも、生地選びの安心につながるからです。

詳しくは、以前まとめた水通しについての記事や、水通し不要で使いやすい生地の一覧も参考にしてください。

それでも水通しした方がいい場面

反対に、やっておいた方が安心な場面もあります。

たとえば、寸法がきっちり出てほしいシャツ、洗濯後の縮みが目立ちやすい服、販売用の作品、初めて扱う素材。こういう時は、手元で一度洗って変化を見ておく方が判断しやすいです。

生地の出どころが分からない場合も同じです。海外で買った生地、古いストック、保管状態が読めないものは、こちらが普段見ている定番生地とは前提が違います。少し手間でも、先に洗う方が気持ちよく作れることがあります。

結局のところ、水通しは「正解を守る作業」というより、自分が後で困らないための確認です。気になるならやる。気にならない用途なら、そのまま進める。そこにもう少し幅があっていいと思います。

生地の裏表は、好きな方を表にしていい

もうひとつ、よく聞かれるのが生地の裏表です。

生地には、企画する側が「こちらを表にしよう」と決めている面があります。糸の撚り、織り組織、光の反射、検反のしやすさなど、理由はいろいろあります。綾織なら、斜めの線の見え方や光沢で表情が変わることもあります。

でも、使う人が反対側の表情を好きなら、そちらを表にしてもかまいません。実際に、あえて裏面を使うデザインもあります。普通の服や小物として使う範囲なら、「裏を使ったから急に弱くなる」というものではありません。

大事なのは、作品の中で面をそろえることです。身頃の右と左で違う面を使ってしまうと違和感が出ることがありますが、最初に「こちらを表にする」と決めて統一すれば、それはその作品の表になります。

耳の小さな穴はヒント。でも絶対ではありません

生地の耳に小さな穴が並んでいることがあります。テンターという機械で幅を整えたり、仕上げたりする時につく針やピンの跡です。

この穴の向きで表裏を見分ける、という話を聞いたことがある方もいると思います。たしかに、ヒントになることはあります。

ただし、絶対ではありません。加工の工程で生地をどちら向きに入れるかによって、穴の見え方は変わります。耳の穴だけで決めきるより、光沢、柄の見え方、織りの表情、手ざわりを合わせて見た方が自然です。

見分け方をもう少し細かく知りたい方は、生地の裏表の判別方法の記事にまとめています。

地の目や縦横は、作品と目的で決める

朝ラジオでは、地の目や生地の縦横についても少し話しました。

型紙に地の目線が書いてある時は、基本的にはそれに合わせるのが安心です。大きな服、ワンピース、エプロン、長く着たいもの、販売するものは、やはり型紙通りに取る方が形が安定しやすいです。

一方で、小物や、短い期間だけ着る子ども服、どうしても柄の向きを優先したいものなら、横地で取っても実用上あまり困らないことがあります。生地や作品によって、許容できる範囲が違います。

「少しでも失敗したくない」時は型紙通りに。「この柄の向きで作りたい」「小さなものだから大丈夫そう」と思える時は、自分の目的を優先する。裁断前の確認については、型紙と生地の裁断についても合わせて読むと判断しやすいです。

最後は、自分が安心して作れる方へ

水通しも、生地の裏表も、知識として知っておくと役に立ちます。でも、知れば知るほど作れなくなるのはもったいないです。

やった方が安心なら、やる。そのまま進めても大丈夫そうなら、進める。裏面の方が好きなら、そちらを表にする。

生地屋としては、必要な根拠はできるだけ伝えたいと思っています。その上で、作る人が最後に気持ちよく決められるのが一番です。

何か作ったら @maruishi または #生地のマルイシ で教えてくださいね。

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