生地のマルイシ、店長の石井です。
今日は少しだけ、言い方に気をつけながら書きたい話です。
「生地は、使う前に必ず水通ししないといけないんですか?」
これ、初心者さんほど悩むところだと思います。作り方を調べると、水通し、地直し、アイロン、布目を整える、という言葉が出てきます。もちろん大事な作業です。でも最初から全部を完璧にやろうとすると、作り始める前にちょっと疲れてしまいます。
結論から言うと、私は、水通しは「絶対にやらなきゃダメな儀式」ではないと思っています。
水通しは、縮みや色落ち、洗った後の風合い変化を先に見ておくための作業です。つまり、リスク管理です。だから、やった方がいい場面はあります。でも、全部の生地、全部の作品で、同じ熱量で必須にしなくてもいいと思っています。
水通しは、正しさよりも「困るかどうか」で考える
たとえば、ぴったりサイズの服を作るとします。
大人服のきれいめなブラウス、ぴったりめのパンツ、丈が大事なワンピース。こういうものは、完成後に縮むと困ります。濃い色と白い布を組み合わせる作品も、色移りすると困ります。
販売用の作品や、大切な方へのプレゼントも、できれば最初に確認しておいた方が安心です。作った後に「洗ったら少し縮みました」「色が少し移りました」となると、自分用より困ることが多いからです。
こういう場合は、水通しや端切れでの色落ちチェックをしておく価値があります。
でも一方で、入園グッズの巾着を作る。子どものゆったりしたスモックを作る。まず一回、ミシンに慣れるために小物を作る。そういうときまで、最初から全部の工程を完璧にしないと始められない、とは思いません。
多少の縮みが大きな問題になりにくいもの、洗濯後に少し風合いが変わっても使えるもの、まず完成させることの方が大事なもの。そういう作品なら、水通しを省いても現実的には問題になりにくいことも多いです。
「やらないとダメ」が、初心者さんの入口を狭くしてしまう
洋裁や手芸は、始める前のハードルがけっこう多いです。
生地を選ぶ。型紙を写す。裁断する。ミシン糸を選ぶ。針を替える。縫う順番を読む。そこにさらに「まず水通しして、乾かして、アイロンして、布目を整えてから」と言われると、正しいけれど、ちょっと遠い。
もちろん、ちゃんとやりたい人はやればいいです。丁寧に準備するのが好きな方もいますし、その方が失敗が減ることもあります。
でも、初心者さんにとって一番大事なのは、まず作ってみて、「あ、できた」と思えることだと思います。
最初の一個が完成すると、次も作りたくなります。次に作るときに、「今度は水通しもしてみようかな」と思えば、それでいいんです。
水通しをしなかったから手芸失格、みたいなことはありません。
お客様からも、こんな声をいただきました
「水通しは、マスクを作る時のガーゼくらいしかしません。縮みやすいリネンやリバティのタナローンなどは、霧吹きでしっかり湿らせて、アイロンで地直ししています。洗って、干して、乾かして、アイロンして……だと、確かにハードルが高く感じます」
この感覚は、とても現実的だと思います。水通しを知らないわけではなく、生地や用途によって準備の仕方を分けている。全部を同じ工程にしないだけです。
水通しした方が安心なもの
ざっくり言うと、失敗したときに困る度合いが高いものは、水通ししておくと安心です。
- ぴったりサイズの服
- 丈やサイズ感が大事な服
- 綿100%、リネン、ガーゼなど、縮みや風合い変化が出やすい生地
- 濃色と白、濃色と淡色を組み合わせる作品
- 販売用の作品や、大切なプレゼント
- 洗濯を何度もする予定の作品で、仕上がり寸法を安定させたいもの
特に濃い色は、素材に関係なく端切れで色落ちを見ておくと安心です。水通し不要と案内している生地でも、濃色と白を組み合わせるときは、念のため確認しておく方が安全です。
省いても進めやすいもの
逆に、次のようなものは「絶対に水通ししてから」と考えすぎなくてもいいと思います。
- 水通し不要と案内されている生地
- 巾着、ポーチ、バッグの裏地などの小物
- 入園入学グッズで、少しの寸法差が大きな問題になりにくいもの
- ゆったりした子ども服やスモック
- まずミシンに慣れるための試し作り
- 洗濯後の少しの変化も味として受け止められる作品
もちろん、気になる方は水通ししてください。そこは自由です。ただ、「水通ししないと作ってはいけない」と思って手が止まるくらいなら、まず作ってみる方がずっといいと思います。
マルイシの「水通し不要」は、作り始めやすさのためでもあります
マルイシでは、商品ページで「水通し不要」と案内している生地があります。
特に綿ポリ生地は、水通し不要で、シワになりにくく、乾きやすいものが多いです。届いたらすぐ裁断に入りやすいので、入園入学グッズ、エプロン、子ども服、小物作りなどで選ばれています。
これは「絶対に何も確認しなくていい」という意味ではありません。濃色の色落ちが心配なとき、白い布と合わせるとき、販売用で安定させたいときは、端切れで確認した方が安心です。
でも、毎回大きな布を水に浸けて、干して、アイロンしてからでないと始められない。そういう負担を減らせる生地があるのは、初心者さんにも、忙しい方にも、かなり助けになると思っています。
水通し不要の生地を探したい方へ
商品ページで水通し不要と案内している布地は、水通し不要の生地一覧にまとめています。綿ポリ、帆布、キルト、ナイロンなど、作りたいものに合わせて選べます。
「ちゃんとする」は、あとからでも増やせます
手芸は、最初から全部ちゃんとしなくても続けられます。
一個作ると、ここは縫いにくかったな、もう少し薄い生地がよかったな、洗ったら少し雰囲気が変わったな、ということがわかります。その経験があると、次に水通しする意味もわかりやすくなります。
最初から正解を全部覚えるより、まず作ってみる。作って、洗って、使ってみる。その方が、自分に必要な準備が見えてきます。
水通しをする人を否定したいわけではありません。丁寧に準備するのは、とてもいいことです。
ただ、水通しをしない選択も、作品や生地によっては普通にあります。
「水通ししなきゃ」と思って作る前に止まってしまうくらいなら、まず一回、作ってみてください。完成したものを使うところまで行くと、洋裁はぐっと楽しくなります。
その入口を、もう少し気軽にしてもいいんじゃないかなと思っています。
水通しは、やりたい人はやる。やった方が安心なものはやる。でも、全部に絶対ではない。
そのくらいの付き合い方で大丈夫です。
洗濯後のシワ感や変化を実際に見たい方は、水通しせずに洗濯・乾燥したテスト記事も参考にしてみてください。